冬の長期取材

2021年02月 東北 - 北海道
風景写真家 高橋よしてる
風景写真家 高橋よしてる
この冬の撮影は、どこにしようかと随分前から考えていた。九州なら阿蘇、四国なら石鎚山山系、山陰なら大山と撮りたい場所は数えきれない。悩みに悩んで決めた結果、霧氷を狙いに北海道へ行く事にした。北海道は4年前の冬にも訪れているが、暖冬の影響で不完全燃焼だったからだ。

今回は、3か月半自粛生活を送っていたため、車内はすっかり普段使いモード。まず車内のセッティングからはじめるのだが、これが意外と大変。ベットを作り、ひと月分の衣類や各種機材を詰め込むと相当な量になる。

次に現地の最新の情報の収集をする。これは毎回やっているのだが、撮りたい被写体のイメージに合う天候などの条件を確認するためだ。今回の主題である霧氷のイメージは、真っ青な空に枝にびっしりと付いた霧氷で、前日に確認した時は、好条件だったはずが再確認するとなんと最悪の条件に変わっていた。天候が回復するのが5日後となった為、急きょ時間調整をしながら東北の撮影をしようと考えた。

まず最初に訪れたのは福島県の秋元湖だ。ここはとても気に入っているポイントで年に何度も訪れている。現場に向かうにあたり一番心配していたのは湖面の凍結だ。それは凍結しているとただの雪原で面白味が足りないからなのだが、この日はちゃんと水面が出ていてくれた。欲をいえば、そこそこ冷え込んだので多少のもやを期待したのだが、残念ながら途中で風が強くなり映り込みも無くなったのでここまで。自然相手なので思ったとおりにはいかないが、それでも良い収穫になった。

翌日の裏磐梯は、曇り予報が出ていたため晴れの予報がでていた宮城県に移動する事にした。
風景写真家 高橋よしてる
福島県 秋元湖
FUJIFILM GFX50S / GF45-100mmF4 R LM OIS WR / F16 1/50秒 ISO-100
宮城県での撮影は、ラムサール条約登録地でもある伊豆沼だ。夏のハスや秋のマガンで有名な撮影ポイントである。ここを訪れた理由はマガンが岸の近くに入っているという情報が入ったからなのだが、実は、”マガン”=”晩秋の鳥”というイメージが強く、厳冬期にどれだけ数がいるのか全く想像もつかなかったので、これまではあまり乗り気になれなかった。今回、実際に現場へ行ってみると予想以上に鳥の数も入っており思いがけず中身の濃い撮影が出来た。

それであまりに気分が良かったので、日中は他のポイントを撮影し早朝は伊豆沼と言うルーティンを3日間繰り返した。作品の沼の中に見える小さな点々は、全てマガンである。北海道へ渡る前に撮影のリズムを思い出せたのでとても良い行程となった。
風景写真家 高橋よしてる
宮城県 伊豆沼
FUJIFILM GFX50S / GF45-100mmF4 R LM OIS WR / F14 1/30秒 ISO-125
仙台からフェリーに揺られること16時間、午前11時に苫小牧に上陸した。ここから最初の撮影ポイントの釧路湿原までは車で5時間もかかる。撮影は翌朝だが事前に現場の確認をしておきたかったので急いで現場に向かった。

到着後、最初にチェックしたのは木々の成長具合だ。4年ぶりとなると木々も成長して撮影に適さないかもしれない。実際に確かてみると、心配していた通り枝が邪魔をして狙っていた構図がとれないことが分かった。翌朝は、もちろん違うポイントで撮影。気温マイナス20度。思ったより霧氷は付かなかったが山間から斜光が入り面白い絵柄が撮影出来た。
風景写真家 高橋よしてる
北海道 釧路湿原
Canon EOS 5D Mark IV / EF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USM / F14 1/25秒 ISO-250
風景写真家 高橋よしてる
北海道 釧路湿原
FUJIFILM GFX50S / GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR / F14 1/250秒 ISO-200
風景写真家 高橋よしてる
FUJIFILM GFX50S / Markins Q20i-BK-S + PLV100170
今回初めてフジフイルムのGFX50Sを使用したのだが、マーキンス PV-100 + LV-170 汎用型 L-プレート セットを装着して快適に撮影する事ができた。やはり寒い時期には、クイックシューがとても重宝する。
北海道 十勝岳
Canon EOS 5D Mark IV / EF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USM / F13 1/800秒 ISO-200
その後、道東地方や十勝地方をひと月ほどかけて撮影し帰路についた。こうした取材はもう数えきれない程繰り返してきたが、正直楽な仕事ではない。年齢とともに体力面でもだんだんきつくなる。

しかしそれでも毎回違う自然との出会いに心が満たされ、もう次の撮影の予定を思い巡らせている。今から新しい出会いが楽しみだ。
写真家 高橋よしてる
高橋よしてる
1965年 千葉県生まれ。 16歳の時、旅行で訪れた釧路湿原で出会ったタンチョウヅルに魅せられ、写真をはじめる。国内外の各地で四季折々に変化する自然やそこに生きる野生生物を精力的に撮影。その作品は、数多くのカレンダー、ポスター、雑誌の表紙を飾っている。
日本風景写真家協会会員
ウェブサイト: teru-photo.com

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