アメリカ西部の探鳥地を訪れて

2019年01月12日
野鳥写真家 中野耕志
昨年末、雄大な風景のなかで暮らす野鳥を撮りたくて、アメリカ西部に飛んだ。野鳥撮影といえばハイエンド一眼レフカメラと500mm F4や600mm F4を組み合わせた大型システムが主流であったが、ここ数年で機材の小型化が進みつつある。とくにニコンから発売されたAF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VRレンズは野鳥撮影に必要な焦点距離を持ちながら重量約1.5kgとこれまでの超望遠レンズの常識を覆すほど軽い。

思い起こせば僕が他にこれほどまでの機材軽量化を実感したのは数年前にマーキンスQ20iQ-BK/BV-22 雲台と出会って以来のことだ。それまで重量級の超望遠レンズを支えるためには大型雲台が必須であったが、マーキンス雲台は小型軽量ながらいとも簡単に超望遠レンズの重さを受け止めてくれたのである。重くなることが避けられない超望遠レンズと雲台の軽量化は、野鳥撮影に革命的な変化をもたらしたといえるだろう。

海外での野鳥撮影において毎回頭を悩ますのは持ち込む機材の選択である。手荷物の大きなウェイトを占めるのは撮影機材で、飛行機搭乗時の手荷物重量制限を超えないよう必要な機材を選択するのはある種のテクニックといえるかもしれない。もちろん撮影現場で妥協はしたくないので、その重量制限を満たした上で最高のモノを選びたい。今回持参した撮影機材はカメラがニコンD850、Z7の2台、レンズはAF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR、AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR、AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR、NIKKOR Z 24-70mm f/4 Sの4本。三脚はジッツオGT2542の三脚ハブをTH-230に換装し、雲台はマーキンスQ20iQ-BK/BV-24PB-10パンバーを取り付けている。この機材構成なら最低限の機材で最高の撮影結果を残せるはずだ。
今回の取材で訪れたのはアメリカ西部のニューメキシコ州とカリフォルニア州のいくつかの探鳥地。越冬中のハクガンの大群やカナダヅルなどを中心に、約100種にも及ぶ野鳥を観察してそのうち数十種を撮影した。野鳥を撮影する前に撮影対象種の識別と基本生態を知ることが重要なので、現場に着いたらまず双眼鏡と望遠鏡で野鳥を観察し、フィールドノートに記録していく。その観察を通じてこの土地にどんな鳥がいてどんな行動をしているのか、そしてどの場面がシャッターチャンスなのかを見極める。もちろん時間帯別の光線状態や背景との位置関係をチェックしておく。この事前の調査・ロケハンが撮影結果を左右するといっても過言ではない。
実際の撮影にあたっては事前調査をもとに撮影場所と時間を決定する。鳥は風上に向いて離着陸するので、飛翔を撮影する場合は常に風向きを意識する必要がある。今回のメイン機材はニコンD850とAF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VRで、システム重量は約2.5kg。500mmレンズは三脚座をアルカスイス互換タイプに換装しているため、マーキンスQ20iQ-BK/BV-24雲台にプレートを介さずそのまま載せることができる。Q20iQ-BK/BV-24はニコンD5と巨大な800mm f/5.6レンズ(システム重量約6kg)を載せてもビクともしないほど強力な固定力を持つので、今回の軽量コンパクトな機材相手は余裕であろう。事実、ハクガンやカナダヅルはもちろんのこと、林内のミヤマシトドやズアカカンムリウズラなど様々なシーンで野鳥撮影したが、カメラブレすることなく期待通りの成果を得ることができた。
野鳥写真家・中野耕志
中野耕志 (なかの こうじ)

1972年生まれ。野鳥や飛行機の撮影を得意とし、雑誌や広告を中心に作品を発表。「Birdscape~鳥のいる風景」、「Jetscape~飛行機の飛ぶ風景」の2大テーマを求めて国内外を飛び回る。近著に「デジタルカメラによる野鳥の撮影テクニック」(誠文堂新光社)、「デジタルカメラ飛行機撮影術」(アストロアーツ)などがある。日本写真家協会会員

ウェブサイト: www.strix-photography.com
  次の現場便り