冬の東北にて

2021年1-2月 東北地方
鉄道写真家 村上悠太
マーキンスと僕、ムラカミの話をする上で、まず「ごめんなさい」と一言お詫びの言葉を述べないといけない。実は僕、自由雲台とクイックシューの組み合わせがあまり好きではなく、写真を初めて以来、ずっと自由雲台もクイックシューも使用してこなかった。そう、通常のねじ込み固定式の3WAYタイプの雲台を使用してきたのだ。前のレポートでも書いているが、何回か試用した他社の自由雲台に正直いい印象がなく、それ以降自由雲台とは距離を取ってきた。

そんなある日、マーキンスを使っている先輩写真家である長根広和さんから「マーキンス、いいよ~」とアドバイスをいただき、「そんなに言うなら」ということで、自由雲台かつクイックシューのQ10i-BKを導入したところ、その利便性と心地よい操作感に非常に驚いて、すぐに2本目の三脚も色違いのQ10i-RDを装着した。そんなマーキンスとの出会いから、しばらくたち、特に冬季での撮影ではその恩恵を強く感じている。
鉄道写真家 村上悠太
鉄道写真家 村上悠太
自由雲台というと、構図を作ろうとノブを緩めるとどこか「ゴロっ」とした操作感があり、それが微調整する際に気になるのが嫌だったのだが、Q10iにはそれがない。パン方向には別のノブもあるのもうれしいポイントだ。従来は各方向の調整を個々に行う3WAY雲台に利便性を感じていたが、現在では一つのノブで全方向に自在に動かせる自由雲台の速攻性に慣れてしまい、三脚を使っていてもスピーディーなフレーミングができるので、自由雲台に多大なメリットを感じている。それは寒い条件下でも同じで気温差で操作感が変わることはなかった。この日の青森県は快晴の予報。その分気温は凍てつくようだ。撮影地近くで車中泊をして明朝を待った。
鉄道写真家 村上悠太
E5系 はやぶさ 東北新幹線 青森県
Canon EOS R5 / RF24-70mm F2.8 L IS USM / F11 1/2500秒 ISO-500
始発の東北新幹線「はやぶさ」が朝日とともにやってきた。気温は-13度ほどだろうか。防寒具から出ている肌が痛い。素手でQ10iを触るのはちょっと危険なくらい寒い。この撮影地は駅から程近く、その駅に停車する始発の「はやぶさ」はそこまで高速ではやってこない。そのため、雪煙があまり上がらないのだが、この日は寒さもあってか辺りの雪はサラサラのパウダースノー。低速でも車両後方に朝日に照らされた雪煙が舞った。

鉄道写真の場合、シャッターチャンスの多くが「列車が来る瞬間」だ。また、商業ベースで考えた場合、一度のシャッターチャンスでオーソドックスな「横構図」と雑誌の表紙などを考慮した「縦構図」の両方を撮ることも少なくない。Q10iはもちろん縦構図にも対応しており、横構図となんら変わらない利便性を確保している。

東北地方は言わずと知れた降雪地域だが、実は太平洋側はそこまで積雪は多くない。しかし、今シーズンの強烈な寒波は太平洋側にも多くの雪を降らせた。

次にご紹介する山田線は盛岡駅と宮古駅を結ぶローカル線。四季折々の風景が魅力だが、実は雪景色というと太平洋側の地域に入ることもあり、ややめずらしい。
鉄道写真家 村上悠太
キハ110系 山田線 岩手県
Canon EOS R5 / RF24-70mm F2.8 L IS USM / F7.1 1/500秒 ISO-2500
鉄道写真家 村上悠太
キハ110系 山田線 岩手県
Canon EOS R5 / RF24-70mm F2.8 L IS USM / F6.3 1/640秒 ISO-2500
鉄道写真家 村上悠太
実はこの日、本当は別な地域に向かおうとしていた。
天気予報を見ても山田線沿線はそこまでの降雪予報ではなく、すぐ横を走る国道のライブカメラにも雪は映っていない。「行っても空振りかな」と確実に積雪がある地域に向かおうとしていた。ある意味「攻めてない」判断だ。
ただ、行ってみなければわからない。雪が積もってなければその時はその時さ、という感覚で夜道を引き返し山田線沿線に向かった。到着すると悪い予感は的中し、積雪がほとんどなかったが、一縷の望みをかけて現地に留まると夜間に一気に降雪が。明朝には望んだ光景が広がっていた。

縦構図の場合、L-プレートシリーズを導入することも1つの選択肢だ。これを使用すれば横構図の使用感のまま、縦にカメラを固定することができるので愛用者も多いと思う。僕は三脚も利用するが、どこにいくにも常にカメラを持ち歩き、さらには35mmの単焦点レンズだけでブラつきながら列車に乗ってスナップしていくような撮り方も好きで、最近はカメラをコンパクトにまとめるためにカメラプレート 「PC-R5」のみ取り付けて使用している。縦位置でも特に不便は感じないし、プレートずれを防止するピンがあるので固定感にも不安はない。
加えて、シチュエーションによっては小ささが魅力の汎用プレート 「P20」を使用することもある。
Markins カメラプレート PC-R5
Markins カメラプレート P20
雪中撮影では常に防寒対策で手袋をしている。カメラの操作を行うため、厚手のものではなく薄手のものを愛用しているが、どうしても細かな作業の時はまごついてしまう。特に通常の三脚のようにネジでカメラを固定する方式だと大変だ。さらに、最近はカメラの高感度特性が高まったこともあり、夜間でもたくさんのシャッターチャンスがあり、夜遅くまで撮影を続けることも増えた。寒く、手袋をした、手元の暗い夜間撮影・・・となると完全にクイックシューのほうが便利なのは一目瞭然。自由雲台なら構図だってすぐに決められる。

1日のロケを終えて帰宅する前、最後の撮影をと夜の駅に向かった。日中は気温が上がり、木々の雪はすでに融けていたが、白と黒のコントラスト、そして列車のヘッドライトの存在感が気になり、構図を作った。
鉄道写真家 村上悠太
鉄道写真家 村上悠太
鉄道写真家 村上悠太
AT-550形 会津鉄道 福島県
Canon EOS R6 / RF15-35mm F2.8 L IS USM / F10 1/4秒 ISO-16000
三脚を使いたい時にすぐに固定できる、すぐに構図を固められるメリットは限りなく大きい。
「自由雲台とクイックシューなんて不便だ」と言っていた過去の僕に「悠太よ、もうすぐ180度意見が変わるぞ!」と伝えてみたい。
鉄道写真家 村上悠太
村上悠太
1987年東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。2017年よりフリーランスの鉄道写真家として「ひとと鉄道、そして生活」をテーマに作品を発表。高校時代には北海道上川郡東川町で毎夏開催される「写真甲子園」に出場。
日本鉄道写真作家協会(JRPS)事業理事
キヤノンEOS学園東京校講師
Twitter: yuta_murakami
 
Instagram: yuta_murakami