春の撮影旅

2023年06月 春の撮影旅
風景写真家 井上嘉代子
毎年桜の開花に合わせて、私も春の撮影旅に出掛ける準備をします。例年なら九州よりスタートをするのですが、今年の桜は全国猛スピードで駆け抜けていった為、奈良県からスタートし、長野県、福島県、山形県と旅を進めました。

撮影旅に出かける際は愛車に乗り込み、車中泊で寝泊まりします。撮影機材に加えて、ポータブルバッテリーやIH調理器、数日分の食料や水、ノートパソコンなどを積み込み、何かあっても数日間は車の中で過ごせるように準備します。
車内のベッドは自作をして、その下には長物の三脚や脚立を収納できるようにしています。私の撮影スタイルは車を走らせながら被写体を見つけることも多く、車を停めてすぐに取り出せるのはとても便利です。
まず最初に目指すのは奈良県の又兵衛桜で、約400キロを走ります。到着した日は雨で、思い描いていた撮影のイメージとは大きく異なっていたので、その日はロケハンのみ。翌日の早朝から本格的な撮影開始です。
昨年よりカメラはソニー α7R Vを使用しています。背面モニターがチルトとバリアングルを持ち合わせた4軸マルチアングルです。私は長年にわたってL-プレートを愛用しており、α7R VにもマーキンスのL-プレート・セット(PSA92 + LSA92)を装着しています。このL-プレートは、α7R Vのマルチアングルモニターに干渉せず使用でき、縦構図にも即座に対応できます。
昼間の撮影を一段落した後、お気に入りの「大宇陀温泉」に浸かりほっと一休み。夕方駐車場に戻ると、空が次第に赤く燃え上がっていく様子が分かりました。

急いで三脚を広げてカメラを設置します。私は右手が不自由な為、常に片手での操作を余儀なくされます。そのため、マーキンスの自由雲台のクイックシューは、ワンタッチで脱着ができるレーバータイプを使用しています。

朝景や夕景のように瞬時に変化する光景を捉えるためには、設置のスピードが非常に重要です。マーキンスの自由雲台とL-プレート、そしてマグネットフレームが採用されている H&Y filter のハーフNDフィルターは、朝景や夕景の撮影において重要なアイテムとなっています。
奈良県から長野県へ移動する途中に、ミツマタ群生地に寄り道。ここでは最近使い始めたカメラ、OM SYSTEM OM-1を使用しました。奥までピントを合わせたいのでピント位置をずらしながら8枚撮影する深度合成で撮影しています。レンズを下に傾けているので重心が前に寄っていますが、雲台はしっかり止まり8枚撮り終えてもブレていません。
長野県に入り石塚の桜へと向かいます。高台の古墳の上に立つ、樹齢推定250年のしだれ桜です。
この日は風がやや強く、しだれ桜を止めて撮るのは難しい状況でした。そこで私は下から煽ることで、躍動感のある揺れる枝を表現することにしました。三脚を低くして斜面に設置し、レンズをぐんと上向きに構えます。自由雲台なので真上に向けることも可能です。減光する為ND64のフィルターを装着して2.5秒の長秒露光で撮影。この角度ではファインダーを覗くことが難しく、マルチアングルモニターが大活躍でした。
長野県から福島県、山形県の桜を追いかけ、再度長野県に戻り大町から富山県の立山雷鳥沢へと向かいます。宿泊は標高2370mにある「雷鳥荘」。4月後半でも氷点下10度以下になり、冬山装備が必要です。登山の時はトラベラー三脚にマーキンスの自由雲台トラベラーモデル(Q3iTRQ)が私の定番。登山用リュックの中にもすっぽり収まります。
初日の夕景は地獄谷横で狙います。雲が多くて半分諦めていたところ、夕日が落ちる時間に雲の切れ間が現れて、地獄谷奥へ沈む太陽を撮影することが出来ました。

撮影後の楽しみはやはり温泉。もくもくと吹き出す白煙と、硫黄臭が漂う大自然を目の前にした雷鳥荘の温泉で、ゆったりとお湯につかるのは最高でした。
最終日は午前1時頃から雲一つなく、見事な天の川が見られました。マーキンスの雲台はマイナス10度以下でもスムーズに動きしっかり止まります。またノブが冬山用の手袋を試着していても回しやすく暗闇でも操作しやすい配置も大変助かります。

総走行距離3000キロを超えるこの春の撮影旅は、美しい天の川で無事終えることができました。桜の開花に合わせて全国を駆け巡り、季節の美しさをカメラに収める喜びは言葉に表せません。次の旅も今から楽しみです。
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風景写真家 井上嘉代子
井上嘉代子
岐阜市生まれ。インテリア・デザイン業界にて広告・風景撮影業務に従事。
2009年交通事故の後遺症により右上肢の機能を失ったのをきっかけに写真家として独立。2016年山梨県の清里へ移住。
八ヶ岳を拠点に車中泊で全国各地を訪問して風景、星景、野生動物、鉄道、花火を撮影。現在は企業カレンダー、ポスター、書籍新聞への寄稿、セミナー講師等幅広く活動している。
また自身の経験を生かし、障がい者のアーティストや作品を撮り続け発信している。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
日本風景写真家協会(JSPA)会員
ソニーαアカデミー講師
NACS-J・自然観察指導員
長野県自然保護レンジャー
八ヶ岳フォトフェスタ実行委員
ウェブサイト: www.kayokoinoue.jp

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