幻のルートから絶景をめざして

2023年06月24日
写真家 三浦奈津美
6月24日、白雲岳のゼブラ雪渓を撮影するため、4人でチームを組み、幻のルートと呼ばれる三笠新道(最大斜度35度以上の難所)を通って登山してきました。

このルートはヒグマの生息地とされ、危険性が高まるとクローズされてしまうため、わずか数週間か、場合によっては数日しか通れない貴重な道なのです。

撮影機材に防寒装備、あれやこれやを詰め込んだザックの重さは約25kg、これを背負って三笠新道を通り、花の咲き誇るカムイミンタラ(神々が遊ぶ庭)と呼ばれる聖地、高根ヶ原を抜けてベースキャンプ地まで約6時間半をかけて登りました。
高根ヶ原
ホソバウルップ草(高根ヶ原)
ようやくベースキャンプに到着し、テントを設営。そこから更に1時間半かけて、目的地である白雲岳のゼブラ雪渓へと進みました。

撮影機材と防寒具を持ちながらの道のりで、疲労もピークに達してましたが、ようやく辿り着いた感動とこれから始まる撮影への高揚感は言葉では表せません。
白雲岳ゼブラ雪渓の夕景
夕方から朝日が昇るまでの長時間撮影のため、山頂には10時間も滞在しました。

厳しい寒さに備え、防寒具を身に纏い、夕景、星空、そして朝日を捉えるためにシャッターを切り続けました。

ほぼ不眠の状態での撮影だったため、カメラを取り付けた三脚を倒しそうになるほどの眠気、そして寒さと戦いながら、時には霧に包まれたり、月明かりに照らされたりしながら時間が過ぎていきました。

そうこうしているうちに月が沈み、満天の星空が目の前に広がりました。
月あかりの白雲岳ゼブラ雪渓
天の川
そして、薄明が訪れると、美しいゼブラ雪渓を見下ろしながら、ビーナスベルトが煌めいて下りてくる光景が広がりました。

過酷な状況ではありましたが、その瞬間の美しさに心が躍りました。
ゼブラ雪渓とビーナスベルト
朝日の撮影を終えて、ようやくベースキャンプまで下山しました。

山岳地帯ではまだ雪が残っており、雪渓をアイゼンを履いて降りていく必要があります。眠気と戦いながら、アイゼンが引っ掛からないように気をつけながら下降する光景は、まさにスリルと緊張の連続でした。

ベースキャンプで一息ついた後、簡素ながらも満足感を味わえる朝食をいただきました。軽量化を重視していたため、フランスパンをスープに浸して食べるシンプルな食事でしたが、空腹の体に美味しさが染み渡りました。

疲労と睡眠不足、そしてこの日は猛暑日という厳しい条件でした。

降山は酷暑という厳しい条件の中ということもあり、体力は完全に限界に達していましたが、このような試練を乗り越える喜びは何物にも代えがたいものでした。

それでも、目に焼き付けられた素晴らしい景色たちには、また来週末にでも再び訪れたいという気持ちを掻き立てられます。

挑戦の連続であったこの旅は、思い出深い一瞬を刻み、心に鮮烈な感動を残してくれました。

勿論、撮影には自重ベースで世界最高クラスの耐荷重量といわれるマーキンスの自由雲台を使用していたのは言うまでもありません。
※ 再生されない場合は
写真家 三浦奈津美
三浦奈津美
北海道北見市生まれ。 子供たちや庭の花を撮るために赤いコンデジで写真をはじめる。 子供の成長と共に、被写体は海や山へと広がり、徐々に写真の世界に引き込まることに。 気が付けば毎週車をはしらせ、金曜日の夜から日曜日の夜まで撮影に没頭するようになる。 現在、山岳・風景・動物・ポートレートとジャンルを問わず様々な撮影を行っている。
ウェブサイト: onatsu-photo.com
※ 三浦さん宛てのお問い合わせは こちら

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